熱心に質問してくれる来場者の名札をふと見たら、競合の社名だった。名札を裏返したまま、価格や仕組みを細かく聞いてくる人がいる。説明を始めたら、相手は自社サービスの売り込みだった。展示会に出ると、初日のうちにこうした場面に出会います。
どこまで話してよいのかを決めていないと、スタッフによって対応がばらつき、話しすぎたり、逆に見込み客まで警戒して逃したりします。この記事では、会期前に決めておく線引きと、当日の受け答えを具体的に説明します。
ブースに来るのは見込み客だけではない
ブースを訪れる人は、おおまかに3種類に分かれます。
| 相手 | 目的 | 基本の対応 |
|---|---|---|
| 見込み客 | 課題の解決策を探している | 時間をかけて聞き、説明する |
| 同業他社 | 製品・価格・見せ方の調査 | 公開している範囲で丁寧に、短く |
| 売り込みの営業 | 自社サービスの提案 | 名刺と資料を預かり、会期後に回す |
同業他社が見に来るのは、展示会ではごくふつうのことです。自社も他社のブースを見て回るはずです(見方は競合・他社ブースの見学術で紹介しています)。敵として扱う必要はありません。必要なのは、話す範囲を先に決めておくことだけです。
話してよいことを3段階に分けておく
その場の判断に任せると、人によって差が出ます。情報を3段階に分け、誰にどこまで話すかを表にしておきます。
| 段階 | 内容の例 | 話してよい相手 |
|---|---|---|
| A 公開情報 | カタログ、Webサイト、展示パネルに載っている内容 | 誰にでも |
| B 条件つき | 価格帯の目安、納期の目安、導入事例の概要 | 名刺を交換し、用件が分かった相手 |
| C 商談のみ | 個別の見積もり、原価や仕入先、顧客名、開発中の製品、図面 | 会期後の商談の場で、見込み客にだけ |
迷ったときの基準は「自社のWebサイトに載っているか」です。載っていることは、競合もすでに読めます。隠しても意味がないので、気持ちよく説明して構いません。価格をどこまで見せるかは、展示会ブースに価格は書くべき?で判断の軸を整理しています。
展示会ブースかんたん見積もり「NEIGHBOR」
1小間のブース、いくらでつくれる?
いずれも1小間(3m×3m)・税別。照明込みで、ターポリンやパネルなどの装飾は別料金です。
最初の30秒で相手を見分ける聞き方
まず名札を見ます。社名が読めないときは、説明を始める前にひとつ質問します。「本日は、どういったことをお探しですか」「どのような業種でいらっしゃいますか」。見込み客なら、自社の困りごとを話してくれます。
あわせて、名刺の交換をお願いします。名乗らない相手、名刺を出さない相手には、段階Aまでにとどめます。
質問の中身も手がかりになります。見込み客が知りたいのは「自社で使えるか」「どのくらい効果があるか」です。質問が「どういう仕組みか」「どこから仕入れているか」「原価はどのくらいか」に偏るなら、調査が目的だと考えてよいでしょう。聞き取りの組み立て方は展示会当日に「何を聞いて、どう残すか」の設計も参考にしてください。
競合だと分かったときの受け答え
態度は変えず、範囲だけを変えます。言い方を2つ用意しておくと、スタッフが慌てません。
1つめは受け入れる言葉です。「同じ業界の方ですね。ありがとうございます。展示している範囲でしたら、どうぞご覧ください」。2つめは線を引く言葉です。「詳しい仕様と価格は、導入を検討されているお客様に個別でご案内しています」。この2つで、ほとんどの場面は収まります。
写真の撮影は、断って構いません。撮られたくない展示物があるなら、A5程度の「撮影はご遠慮ください」という表示を、展示物のそばに置きます。会場全体の撮影ルールは主催者が定めているので、マニュアルも確認しておきます。
資料の置き方も見直します。通路から手に取れる場所に置くのは、持って行かれてよいものだけ。詳しい価格表や仕様書は、バックヤードに置き、必要な相手に手渡します。置き場所のつくり方は1小間でもつくれる展示会ブースのバックヤードで説明しています。
混んでいる時間に長く居られたら、「お客様のご案内がありますので、失礼します」と切り上げます。目安は3分です。
売り込みの営業が来たとき
会期中に優先するのは、来場者への対応です。売り込みには「担当に渡しますので、お名刺と資料をお預かりします」と伝え、30秒ほどで終えます。
受け取った名刺は、見込み客の名刺と分けて保管します。箱を別にするか、名刺の角に印をつけるだけで十分です。混ぜてしまうと、会期後のお礼メールが売り込みの相手にも届き、見込み客の数も実際より多く見えてしまいます。集めた名刺の扱いは展示会で集めた個人情報の扱い方も確認してください。
スタッフ全員で線引きをそろえる
決めた内容は、A4用紙1枚にまとめます。載せるのは、3段階の表、受け答えの言葉2つ、判断に迷ったときに呼ぶ責任者の名前の3点です。会期前の説明会で読み合わせ、当日は毎朝の朝礼で1分だけ確認します。進め方はスタッフ向け事前説明会とロールプレイの進め方が参考になります。
アルバイトや派遣のスタッフには、段階Aだけを任せ、それ以上は社員に引き継ぐ形にすると安全です。「詳しい者に代わります」と言えるだけで、話しすぎは防げます。商談の席を通路から見えにくい位置に取っておくと、段階Bの話もしやすくなります。配置の例は施工事例でご覧いただけます。
よくある質問
名札を隠している人に、社名を聞いてもよいですか?
聞いて構いません。「お名刺をいただけますか」は、展示会では自然なお願いです。断られたら、展示している範囲の説明にとどめれば十分です。問い詰める必要はありません。
自社が競合のブースを見に行くときの作法はありますか?
名札をつけたまま行き、聞かれたら社名を名乗ります。混んでいる時間は避け、撮影はひとこと断ってからにします。自社がされて困ることはしない、が基準です。
まとめ
ブースには、見込み客のほかに同業他社や売り込みの営業も来ます。慌てないために、情報を「公開情報」「条件つき」「商談のみ」の3段階に分け、最初の30秒で相手を確かめます。
競合には、公開している範囲を丁寧に、短く。売り込みには、名刺を預かって30秒で。この線引きをA4用紙1枚にまとめて全員で共有しておけば、スタッフは安心して見込み客との会話に集中できます。
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