初めての出展で、意外と当日まで気づかないのが「荷物の置き場所」です。パンフレット10箱、ノベルティの段ボール、来場者に見せない試作品、スタッフの上着とカバン、そして梱包材。これらが行き場を失うと、商談テーブルの下や壁際に積み上がり、せっかくの装飾が台無しになります。
この記事では、ブース内の収納スペース「バックヤード」について、何をどれだけしまう必要があるのか、1小間という限られた広さでどうつくるのかを、具体的な寸法とともに解説します。
バックヤードとは、ブース内の「見せない場所」
バックヤードとは、パンフレットやノベルティ、荷物、梱包材を保管しておくブース内の小さな倉庫のことです。ストックルーム、収納庫とも呼ばれます。来場者からは見えない位置に、壁やカーテンで仕切ってつくります。
「9平方メートルしかない1小間に、倉庫まで置く余裕はない」と感じるかもしれません。しかし実際には、バックヤードがないブースほど散らかって見えます。荷物は必ず発生するので、置き場を決めないという選択肢は存在しません。決めなければ、来場者の目に触れる場所に置かれるだけです。
特に見落としやすいのが梱包材です。展示物や什器が入っていた段ボール、緩衝材、木枠は、会期中ずっとブース内で保管するのが原則。会場の通路や他社の小間に置くことはできませんし、多くの展示会では初日に廃棄することも認められていません。撤去のとき同じ箱に詰め直す必要があるからです。
何を、どれだけしまうことになるのか
必要な広さを見積もるために、まず物量を洗い出します。3日間の展示会に出展する場合の目安は次の通りです。
| しまうもの | 量の目安 | 必要なスペース |
|---|---|---|
| パンフレット・カタログ | 1,000部程度で段ボール3〜4箱 | 床面積0.3平方メートル・高さ1m |
| ノベルティ | 500個で1〜2箱(かさばる物はさらに) | 床面積0.2平方メートル |
| 梱包材・空き箱 | 展示物の大きさ次第で2〜5箱 | 床面積0.3〜0.5平方メートル |
| スタッフの私物 | 1人あたりカバン1つと上着1着 | ハンガーポール幅0.5m程度 |
| 予備・補充品 | 電源タップ、文具、清掃用具、飲料 | 床面積0.2平方メートル |
合計すると、3日間・スタッフ3名程度の出展で床面積1平方メートル前後が目安になります。1小間の約9平方メートルに対して、およそ1割強。これを最初から設計に織り込んでおけば、当日慌てずに済みます。
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1小間のブース、いくらでつくれる?
いずれも1小間(3m×3m)・税別。照明込みで、ターポリンやパネルなどの装飾は別料金です。
1小間でバックヤードをつくる3つの方法
限られた広さでも、やり方は3つあります。予算と物量に応じて選んでください。
- 受付カウンターの下を使う:最も手軽で追加費用がほぼかからない方法。幅1,200mm×奥行450mm程度のカウンターなら、下に段ボール3箱ほど入ります。前面に幕を張れば中身は見えません。物量が少ない出展ならこれで足ります
- 壁で囲った小部屋をつくる:小間の奥の角に、幅900mm×奥行900mm程度の三角形または四角形の囲いを立てる方法。人が1人入れる広さがあり、着替えや電話にも使えます。造作費用は加わりますが、最も使い勝手が良い形です
- カーテンで仕切る:壁を立てず、ポールとカーテンで奥の一角を隠す方法。費用を抑えつつ、床から天井まで隠せます。ただし外から押されると動くので、貴重品の保管には向きません
どの方法でも、位置は通路から最も遠い奥の角が基本です。来場者の視線と動線から外れるうえ、スタッフが出入りしても商談の邪魔になりません。ブース全体の動線設計については入りやすいブースには理由がある。受付と動線の設計もあわせてご覧ください。
つくるときに押さえたい寸法と注意点
小部屋タイプをつくる場合、実務で効いてくるポイントがいくつかあります。
- 出入口の幅は600mm以上:これを下回ると、段ボールを抱えたまま出入りできません。扉ではなくカーテンにすると、開閉スペースが不要で省スペースです
- 奥行は900mm確保したい:600mmだと人が入れず、手前の荷物を出さないと奥が取れません
- 棚を1段入れる:床置きだけだと段ボールを積み上げることになり、下の箱が取り出せなくなります。高さ700mm程度に棚板を1枚渡すだけで、収納効率は倍近くになります
- 高さは壁と揃える:バックヤードだけ低いと、上から中身が見えてしまいます。特に2階通路や高い位置から見下ろされる会場では注意が必要です
なお、バックヤードの壁も装飾物として高さ規定の対象になります。什器をレンタルで揃える場合の考え方は借りる?つくる?持ち込む? 展示会ブースの什器の決め方で整理しています。実際の納まりは施工事例も参考になるはずです。
会期中の運用を決めておく
場所をつくっても、運用が決まっていないと初日の昼には荒れます。最低限、次の3つを事前に共有しておいてください。
ひとつめは補充の担当と時間。パンフレットが切れてから探すのではなく、朝の開場前と昼休憩後に補充する、と決めておきます。ふたつめは貴重品を置かないこと。バックヤードは施錠できないことがほとんどなので、財布やパソコンは持ち歩くか、主催者のクロークを使います。みっつめは最終日の撤去段取り。梱包材をどの箱に何を入れるか、箱に番号を振っておくと撤去が驚くほど速くなります。搬出全体の流れは前日18時に会場は閉まる。展示会の搬入・搬出の段取りと持ち物リストで解説しています。
よくある質問
Q. バックヤードをつくると、展示スペースが狭くなりませんか?
物理的には狭くなりますが、体感の広さはむしろ増えます。荷物が露出したブースは雑然として見え、来場者は入りづらさを感じます。1平方メートルを収納に使って残り8平方メートルをすっきり見せるほうが、9平方メートルに荷物が散らばっている状態より広く感じられます。奥行の浅い1小間ほど、この差は大きく出ます。
Q. 空き段ボールを主催者に引き取ってもらうことはできますか?
会期中の預かりサービスを用意している展示会もありますが、有料かつ事前申込制で、締切も早めです。用意がない展示会も多いため、原則は「自分のブース内で保管する」と考えて設計してください。出展マニュアルの付帯サービスの章に記載があるので、申込期限とあわせて確認しましょう。
Q. 荷物は会期前に会場へ送っておけますか?
多くの展示会で事前搬入の受付日が設定されており、指定の宛名ラベルを貼って送ると小間まで届けてもらえます。ただし受取可能な日時が限られ、早すぎる到着は受け取ってもらえません。指定業者以外の宅配便は搬入口で止まることもあるため、マニュアルの配送方法の指定を必ず確認してください。
まとめ
バックヤードは、目立たないけれどブースの見え方を大きく左右する要素です。3日間・3名の出展なら床面積1平方メートル前後を見込み、通路から最も遠い奥の角に、出入口600mm以上・奥行900mm・棚1段を目安につくる。この基準を持っておけば、装飾会社との打ち合わせでも具体的に相談できます。
デザインを詰める前に、まず「何をどれだけ持ち込むか」を書き出してみてください。そこから逆算するのが、散らからないブースへの近道です。
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