3日間で名刺が300枚集まった。数字だけ見れば大成功です。ところが会期が終わって名刺の束を前にすると、「この人は本気で検討していた人か、カタログだけもらいに来た人か」が思い出せない。結局、全員に同じお礼メールを送って、そこで止まってしまう——初出展の翌週に起きがちな光景です。
原因は接客の腕ではなく、「当日その場で何を記録するか」を決めていなかったことにあります。この記事では、名刺に添える最小限のヒアリング項目、紙とタブレットの選び方、聞ける状態をつくるブースの設計、そして会期後のフォロー順の決め方までを整理します。
名刺には「温度」が残らない
名刺から分かるのは、会社名・部署・役職・連絡先です。これは「誰か」の情報であって、「どれくらい欲しがっているか」の情報ではありません。その温度は、話した本人の頭の中にだけ2〜3時間残って、次の来場者で上書きされていきます。
1日に80人と話す担当者なら、記憶に残るのは印象の強かった5人程度。残りの75人は名刺だけの存在になります。だからこそ、その場で1枚あたり15〜30秒、4項目だけメモを残す仕組みをつくっておく価値があります。
当日聞くのは、この4つで足りる
ヒアリング項目は増やすほど精度が上がる、と思われがちですが逆です。立ち話の相手に10項目も聞けば、途中で離脱されます。初出展なら、次の4つに絞るのが現実的です。
| 聞くこと | 会話での聞き方の例 | 分かること |
|---|---|---|
| 来場の目的 | 今日は何かお探しでいらっしゃったんですか | 情報収集か、具体的な検討か |
| いま困っていること | 今このあたりで手間がかかっているのはどこですか | 自社が役に立てる余地 |
| 検討の時期 | もし進めるとしたら、いつ頃のお話になりそうですか | 半年以内か、それ以降か |
| 社内での立場 | このテーマは◯◯さんが中心で進めていらっしゃる感じですか | 決める人か、情報を持ち帰る人か |
コツは、質問文をそのまま読み上げないこと。表の右側のような自然な言い回しを、事前にスタッフ全員で声に出して練習しておきます。「検討時期はいつですか」と聞くと詰問になりますが、「もし進めるとしたらいつ頃のお話になりそうですか」なら雑談のまま聞けます。
そして記録は、名刺の裏に手書きでも構いません。大事なのは、4項目を全員が同じ形式で残すことです。書式がばらばらだと、会期後の集計で必ず手が止まります。
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1小間のブース、いくらでつくれる?
いずれも1小間(3m×3m)・税別。照明込みで、ターポリンやパネルなどの装飾は別料金です。
紙かタブレットか、規模で決める
記録の方法は大きく2つ。どちらが正解ということはなく、来場者数とスタッフの人数で決めるのが実務的です。
| 方法 | 向いている規模 | 利点 | 弱点 |
|---|---|---|---|
| 名刺+手書きメモ | 1〜2小間、想定100〜200名 | 練習不要、通信環境に左右されない | 会期後の入力作業が発生する |
| タブレットのフォーム入力 | 想定200名以上 | そのままデータになる、集計が速い | 入力に時間がかかり会話が止まりやすい |
| 来場者バッジの読み取り | 主催者が貸出している展示会 | 数秒で属性情報が取れる | 温度感は別途メモが必要 |
初出展でいきなりタブレット運用に踏み切ると、画面を見ている時間が長くなって会話が細切れになりがちです。1回目は名刺+手書き、2回目以降でデジタルに移行する、という順番をおすすめしています。バッジ読み取り機(バーコードリーダー)は主催者が有料で貸し出していることが多いので、出展社マニュアルの申込一覧を確認してみてください。
聞ける状態をブース側でつくる
どれだけ項目を練っても、立ったまま通路で話していては4つ目にたどり着く前に相手が動いてしまいます。聞くための場所と役割分担が必要です。
まず場所。1小間でも、奥に幅1.5m程度のスペースを確保してハイテーブルと椅子を置けば、腰を落ち着けて話せる場所になります。つくり方は立ち話で終わらせない。1小間からつくる展示会の商談スペースにまとめました。
次に役割分担。通路で声をかける人、ブース内で説明する人、記録を書き留める人を分けると、接客の回転が目に見えて変わります。2人体制なら「声かけ+説明」と「記録+名刺整理」の2役、3人なら完全に分けるのが基本形です。立ち位置や声のかけ方はブースに立つ人で成果が変わる。展示会スタッフの服装・立ち位置・声かけもあわせてどうぞ。
記録を書く場所として、高さ100cm前後のカウンターが1台あると便利です。立ったまま書けて、資料の受け渡しにも使えます。こうした什器を含めたブースの構成は施工事例もご覧ください。
ランク分けして、48時間以内に動く
集めた情報は、その日のうちに3段階に振り分けます。判断基準はシンプルで構いません。
| ランク | 目安 | 会期後の動き |
|---|---|---|
| A | 検討時期が半年以内、かつ決裁に関わる人 | 48時間以内に個別メールか電話 |
| B | 課題は明確だが時期が未定 | 1週間以内に事例つきのメール |
| C | 情報収集が目的 | メール配信のリストに追加して継続接触 |
Aランクは、会期中の夜のうちに下書きだけでも用意しておくのが理想です。来場者は同じ日に何十社ものブースを回っています。記憶が残っているうちに連絡が届くかどうかで、返信率はまったく変わります。
その後の30日をどう使うかは、名刺の山で終わらせない。展示会が終わってからの30日でやることで詳しく触れています。
よくある質問
Q. アンケート用紙を配って書いてもらうのはどうですか?
A. ノベルティと引き換えにする形なら回収率は上がりますが、「書きたいこと」しか書かれないので温度感は分かりにくくなります。記入式にするなら設問は3問まで、選択式中心にして、会話のメモとは別物として扱うのが現実的です。
Q. 名刺を持っていない来場者にはどう対応しますか?
A. 無理に求めず、こちらの名刺をお渡しして終えて構いません。名刺切れや個人での来場もあります。どうしても連絡先が必要な場合は、資料送付の希望を伺う形でメールアドレスだけをいただくと、相手の抵抗が小さくなります。
Q. スタッフによってメモの質に差が出てしまいます。
A. 自由記述をやめると解決します。名刺に貼る小さなシールや、印字したメモ用紙に「目的/課題/時期/立場」の4枠だけ用意して、各枠に一言ずつ書く形にすれば、誰が書いても同じ粒度になります。前日のミーティングで3分だけ書き方を揃えておきましょう。
まとめ
展示会の成果は、名刺の枚数ではなく「動かせるリードの数」で決まります。そして動かせるかどうかは、当日その場で4項目を残したかどうかで分かれます。
聞くことを4つに絞る。全員が同じ形式で記録する。落ち着いて話せる場所と役割分担をブース側に用意する。そして48時間以内にAランクへ連絡する。この4つが回れば、会期後の名刺の束は「次の商談リスト」に変わります。
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