ブースの装飾にはしっかり予算をかけたのに、隣のブースのほうが人が集まっている。展示会の現場でよく起きることです。原因はデザインではなく、ブースに立っている人の振る舞いにあることが少なくありません。
来場者は3秒ほどで「入るか、通り過ぎるか」を判断しています。その3秒に効くのは、スタッフがどこに立ち、どんな表情で、何と声をかけたか。この記事では、初出展でも当日から実践できるスタッフ運営の基本を、服装・立ち位置・声かけ・シフトの4点に分けて解説します。
服装は「清潔感」より先に「見分けやすさ」
服装で最優先すべきは、来場者から見て一目でスタッフと分かることです。話を聞きたいと思っても、誰に声をかければいいか分からなければ、来場者はそのまま去ってしまいます。
揃えやすいのは次の3パターンです。予算と業種に合わせて選んでください。
| パターン | 向いているケース | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 社名入りポロシャツ | 製造業・食品・技術系。動きやすく親しみやすい | 1枚3,000〜5,000円程度 |
| ジャケット+社名入り名札 | 金融・IT・コンサルなど商談中心の業種 | 名札のみの追加で済む |
| エプロン・法被などの企業色 | 飲食・小売・地域産品。目立たせたいとき | 1枚2,000〜6,000円程度 |
あわせて押さえたい実務的なポイントが2つあります。ひとつは靴。会場は硬い床で、3日間の会期なら1日8時間近く立ちっぱなしになります。見た目より疲れにくさを優先してください。もうひとつは名札の文字サイズで、氏名は20mm以上、社名は15mm以上あると、立ったまま読める距離になります。
立ち位置ひとつで「入りやすさ」が変わる
最も多い失敗が、ブースの正面中央に腕を組んで立つことです。これは通路から見ると入口をふさいでいる状態で、来場者は無意識に避けます。逆に、奥のテーブルで自社スタッフ同士が話し込んでいるのも、「今は忙しそう」というサインになります。
| ありがちな立ち位置 | 来場者から見た印象 | 改善のしかた |
|---|---|---|
| 正面中央で腕組み | 入口をふさがれている | 通路に対して斜め45度に立つ |
| 奥でスタッフ同士が雑談 | 話しかけにくい | 会話は1分以内、常に通路側を向く |
| 全員が座っている | 営業していないように見える | 最低1人は必ず立っている |
| 入口で待ち構える | 捕まりそうで怖い | 半歩下がり、展示物の横に立つ |
おすすめは、展示物やパネルの横に、通路に対して斜めに立つ形です。来場者と正対しないため圧迫感がなく、視線が合ったときに自然に声をかけられます。ブース全体の人の流れの作り方は受付と動線の設計もあわせてご覧ください。
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1小間のブース、いくらでつくれる?
いずれも1小間(3m×3m)・税別。照明込みで、ターポリンやパネルなどの装飾は別料金です。
最初のひと言は「質問」ではなく「情報」から
「何かお探しですか?」は、展示会で最も避けたい第一声です。来場者は反射的に「いえ、大丈夫です」と答えるようにできているからです。質問で始めると断られると覚えておいてください。
効果的なのは、答える必要がない情報の提示から入ることです。
・「こちら、◯◯を30秒で計測できる機械です」
・「今、実演が始まるところです。よろしければどうぞ」
・「その資料に載っている事例、実物がこちらにあります」
情報から入ると、来場者は「断る」ではなく「聞く/聞かない」を選ぶことになり、心理的な壁が下がります。相手が足を止めたら、そこで初めて「どのようなお仕事をされていますか?」と質問に移ります。実演を組み込む場合の見せ方はブースでの実演・デモの見せ方が参考になります。
もうひとつ大事なのが引き際です。明らかに興味がなさそうな相手に粘ると、その時間で本命の来場者を逃します。目安として、反応が薄ければ30秒で切り上げ、資料を渡して見送る。この割り切りが1日の成果を左右します。
シフトは2時間交代を目安に組む
立ち仕事と会話を続けると、集中力は2時間ほどで落ちます。「昼から急に人が減った」と感じるとき、実際には来場者ではなくスタッフの声かけ回数が減っているだけ、というケースがよくあります。
3人体制・10時〜17時開催の場合のシフト例です。
| 時間帯 | 通路側(声かけ) | 商談・説明 | 休憩 |
|---|---|---|---|
| 10:00〜12:00 | Aさん | Bさん | Cさん(準備・記録) |
| 12:00〜14:00 | Cさん | Aさん | Bさん(昼食) |
| 14:00〜16:00 | Bさん | Cさん | Aさん(昼食・名刺整理) |
| 16:00〜17:00 | 全員で対応(来場者が再び増える時間帯) |
ポイントは、休憩を「余ったら取る」ではなく最初から時間割に入れておくことです。また、休憩に入る人が名刺の整理やその日のメモを担当すると、記録が会期後に残ります。会期後の集計や報告のしかたは展示会後の社内報告のまとめ方にまとめています。
当日配る「A4一枚メモ」をつくる
応援スタッフや他部署のメンバーが入る場合、事前研修の時間はほとんど取れません。そこで有効なのが、朝礼で配って各自がポケットに入れておけるA4一枚のメモです。書く内容は次の5項目で十分です。
・今日の目標(例: 名刺100枚、うち商談化10件)
・第一声のセリフを2〜3パターン、そのまま読める形で
・絶対に伝える3つのこと(自社の強みを3行以内で)
・聞き取る項目(業種・課題・導入時期など、アンケート設計と揃える)
・答えられない質問の対応(「担当から連絡します」と名刺をもらう)
特に「第一声のセリフ」を用意しておくと、慣れていないスタッフの立ち上がりがまったく違います。実際のブースでのスタッフの立ち位置は施工事例の写真からもイメージしやすいはずです。
よくある質問
Q. コンパニオンを頼んだほうがいいですか?
A. 目的によります。認知拡大が目的で、チラシ配布や呼び込みの物量を増やしたいなら効果があります。一方、商談獲得が目的なら、製品を説明できる自社スタッフを増やすほうが有効です。予算は1名1日3万円前後が目安ですが、まず自社スタッフの声かけの型を整えるほうが費用対効果は高くなります。
Q. ブースに何人立てばいいですか?
A. 1小間(3m×3m)なら、常時2名・交代要員を含めて3名が目安です。1名だと商談中に他の来場者を取りこぼし、4名以上だとスタッフだけで混み合って来場者が入りにくくなります。2小間なら常時3名・総勢4〜5名が目安です。
Q. 話しかけるのが苦手なスタッフはどう配置すればいいですか?
A. 無理に通路側に立たせる必要はありません。実演の操作や、足を止めた来場者への詳しい説明など、相手から近づいてきた後の役割に回すと力を発揮します。声かけが得意な人と組ませ、「声をかける人」と「詳しく話す人」で分業するのが現実的です。
まとめ
・服装は一目でスタッフと分かることを最優先に決める
・正面中央をふさがず、展示物の横に斜めに立つ
・第一声は質問ではなく情報の提示から入る
・シフトは2時間交代、休憩を先に時間割へ入れる
・A4一枚メモで当日のスタッフ全員の基準を揃える
ブースの装飾は「足を止めてもらう」ための投資、スタッフの振る舞いは「止まった人と話す」ための準備です。どちらか一方だけでは成果になりません。会期の1週間前に、この記事の内容をもとに30分だけスタッフ全員で打ち合わせをしておくと、当日の動きが大きく変わります。
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