展示会の会場を歩いていると、遠くからでも「あ、これは自社に関係がありそうだ」と感じるブースと、たしかに目に入っていたはずなのに記憶に残らないブースがあります。この差の多くは、デザインの豪華さではなく掲げている言葉で決まります。
来場者がブースの前を通り過ぎながら判断に使う時間は、3秒ほどといわれます。その3秒で読めるのは、せいぜい15文字前後。この記事では、その15文字に何を書くかの決め方を、手順に沿って整理します。特別なコピーライティングの技術は必要ありません。
社名だけの看板が、読み飛ばされてしまう理由
初出展のブースでいちばん多いのが、もっとも目立つ場所に社名だけが大きく入っているパターンです。もちろん社名は必要ですが、社名はすでに知っている人にしか意味を持たない言葉です。初めて出会う来場者にとって、社名は「自分に関係があるかどうか」の判断材料になりません。
来場者がその3秒で知りたいのは、ここで自分の困りごとが解決しそうか、その一点だけです。ですから、いちばん目立つ場所には社名ではなく、来場者の困りごとか、自社と取引したらどうなるかを書きます。社名はその下か、ブースの手前側に小さく添えれば十分伝わります。通路から見たときの見え方はブースのレイアウトと動線の考え方もあわせてご覧ください。
書く内容を決める、3つの質問
何を書くかは、次の3つに順番に答えていくと決まります。
- 誰に来てほしいか。「製造業の方」では広すぎます。「金属部品の調達を担当している方」くらいまで絞ります。
- その人は、何に困っているか。「単価を下げたい」「短納期に対応してほしい」「小ロットで試したい」など、実際の商談で相手が口にした言葉を思い出します。
- 自社と取引すると、どうなるか。「試作が3日で上がる」「10個から受けられる」のように、できれば数字で。
3つが揃ったら、2番目と3番目をつないで短い文にします。「小ロットの金属加工、10個から。試作は3日。」といった具合です。気の利いた言い回しを探すより、具体的な数字が入っているかを優先してください。数字は読み手の頭のなかで勝手に比較され、記憶に残ります。
社内で言葉が決まらないときは、直近の商談でお客様が最初に口にした困りごとを5つ書き出してみてください。そのなかでいちばん多く出てきた言葉が、たいてい正解に近いところにあります。
展示会ブースかんたん見積もり「NEIGHBOR」
1小間のブース、いくらでつくれる?
いずれも1小間(3m×3m)・税別。照明込みで、ターポリンやパネルなどの装飾は別料金です。
「高さ」で言葉の役割を分ける
ブースに書く言葉は1種類ではありません。来場者との距離によって、読める文字量は変わります。高さごとに役割を分けて配置すると、遠くからも近くからも伝わるブースになります。
| 高さの目安 | 読まれる距離 | 文字数の目安 | 文字サイズの目安 | 書く内容 |
|---|---|---|---|---|
| 2.1〜2.7m(壁の上部) | 10〜20m | 10〜15字 | 150〜250mm | いちばん伝えたい一言 |
| 1.4〜2.0m(目線の高さ) | 3〜5m | 30〜60字 | 40〜80mm | 一言を裏づける3つの特長 |
| 0.9〜1.3m(テーブル面) | 1m以内 | 自由 | 15〜25mm | 事例・スペック・価格 |
文字サイズは「離れて読ませたい距離(m)×10」でミリのおおよその目安が出ます。5m離れて読ませたいなら50mm、というように計算してみてください。いちばん上の一言を決めるのが、この記事のテーマです。目線の高さにはその一言を裏づける特長を3つほど、手元には立ち止まってくれた人が読むための詳しい情報を置きます。
色の決め方は展示会ブースの配色の決め方、出力物の作り方と入稿の段取りはグラフィックの作り方と入稿の基本にまとめています。
やりがちな3つの失敗
- 強みを全部書いてしまう。強みが5つあると5つとも書きたくなりますが、壁の上部に5つ並べるとどれも読まれません。5つのうち1つを選ぶことが設計です。残り4つは目線の高さに回しましょう。
- 業界の言葉で書いてしまう。社内では当たり前の用語が、来場者には通じないことがあります。展示会は、隣の業界の人がたまたま通りかかる場でもあります。中学生が読んで意味が分かるかを基準にすると、だいたい適切なところに収まります。
- 言葉を低い位置に置いてしまう。来場者の前には人が立ちます。目線より下にある文字は、混雑すると体で隠れて読めません。遠くから読ませたい言葉は、必ず1.8mより上に置いてください。
決めた言葉は、当日の「声かけ」とそろえる
掲げた言葉とスタッフの第一声がずれているブースは、意外と多いものです。壁には「試作3日」と大きく書いてあるのに、スタッフは「よろしければパンフレットどうぞ」と声をかけている、というような。これでは、せっかく足を止めた理由が会話につながりません。
掲げた言葉は、そのまま声かけの台本に使えます。「試作でお困りのことはありますか」と聞けば、足を止めた理由がそのまま商談の入口になります。ブースの言葉が決まったら、当日立つメンバー全員に共有しておいてください。当日の立ち方や声のかけ方はスタッフの服装・立ち位置・声かけに、聞いた内容の残し方は当日に何を聞いて、どう残すかの設計にまとめています。
よくある質問
Q. キャッチコピーは、出展のたびに変えたほうがいいですか?
A. 出展する展示会の来場者層が変わるなら、変えたほうが効きます。同じ会社でも、部品調達の担当者が集まる展示会と、経営層が集まる展示会では響く言葉が違います。システムパネルのブースであれば、差し替えは大判出力の貼り替えだけで済むことが多く、数万円程度から対応できます。
Q. 英語も併記すべきでしょうか?
A. 海外からの来場者が多い展示会なら、いちばん上の一言だけ英語を併記すると効果があります。すべてを2言語にすると文字が小さくなって逆効果になりますので、併記するのは一言に絞るのがおすすめです。
Q. 1小間(約3m×3m)でも、大きな言葉を掲げられますか?
A. 掲げられます。1小間の場合、正面に使える壁はおおむね幅2.9m程度。ここに150mm前後の文字なら15字ほど入ります。むしろ小さなブースほど、情報を絞って大きく見せたほうが通路から気づかれやすくなります。
まとめ
ブースに掲げる言葉は、デザインの装飾ではなく、展示会の成果を決める設計そのものです。通路を歩く人が使う時間は3秒、読めるのは15文字。その15文字に、社名ではなく来場者の困りごとか取引したらどうなるかを、できれば数字つきで書く。それだけで、足を止める人の数は変わります。
書く内容が決まれば、ブースのデザインも、置く展示物も、当日の声かけも自然に決まっていきます。まずは直近の商談を思い出して、お客様が実際に使った言葉を書き出すところから始めてみてください。言葉が実際のブースでどう見えるかは施工事例もご参考にどうぞ。
東京フィルムアートでは、初めての出展でも安心の展示会ブース装飾サービスを提供しています。イメージ図を選ぶだけで概算見積もりがつくれる「NEIGHBOR」もぜひご活用ください。
コメント