準備を何か月もかけて進めてきたのに、当日ふたを開けてみたら誰が何をするのか決まっておらず、スタッフが全員そろって同じ来場者に話しかけている。あるいは名刺が昼過ぎに切れて、慌てて近くのコンビニでコピーを取る。展示会の現場では、こうした「準備不足ではなく段取り不足」のつまずきが本当によく起きます。
この記事では、初めて展示会に出展する担当者の方に向けて、当日を落ち着いて回すための役割分担の考え方、人数別のシフトの組み方、持ち物チェックリスト、そして開場前30分にやるべきルーティンまでを具体的にまとめます。読み終えたら、そのまま自社のスタッフに配れるメモが作れる状態を目指しています。
役割は「呼び込み・商談・フリー」の3つが基本
ブース運営の仕事は、大きく3つに分けて考えると整理しやすくなります。
ひとつめは呼び込み。通路を歩いている人に声をかけ、ブースの中に入ってもらう役です。立ち位置はブースの角、通路から半歩入ったあたり。ずっと立ち続ける仕事なので、体力的にはいちばんきついポジションです。
ふたつめは説明・商談。興味を持って足を止めた人に製品やサービスを説明し、必要なら奥の商談スペースへ案内します。ここは製品知識がある人、できれば普段から営業をしている人を置きたいところです。
みっつめはフリー。パンフレットの補充、名刺の整理、ノベルティの在庫確認、他のスタッフの休憩交代、想定外のトラブル対応。地味ですが、この役がいるかどうかで一日の疲れ方がまったく変わります。初出展のブースで「なんだかバタバタしていた」と感じる原因は、たいていフリー役が不在で全員が接客に出てしまっていることです。
人数別・シフトの組み方の目安
役割が分かっても、実際には「そんなに人を出せない」というのが中小企業の現実だと思います。人数ごとの現実的な回し方は次のとおりです。
2名の場合。1人が呼び込み、1人が説明に専念し、90分ごとに役割を入れ替えます。2人とも接客に入ってしまう時間が出るので、その間はブースを無人にしないことだけを最優先に。昼食は必ず時間をずらして取ります。
3名の場合。呼び込み・説明・フリーを1人ずつ配置し、2時間ごとにローテーションします。呼び込みを2時間以上続けると声が出なくなるため、ここを固定しないことが大事です。
4〜5名の場合。呼び込み2名、説明2名、フリー1名。呼び込みを2名にできると、ブースの間口が広い場合でも取りこぼしが減ります。休憩は1人ずつ、30分単位で回すとシフト表が作りやすくなります。
シフト表はA4の紙1枚に、縦軸を時間(9:30から18:00まで30分刻み)、横軸をスタッフ名にした表を書いて、ブースのバックヤードに貼っておくのがいちばん確実です。スマホの共有カレンダーよりも、その場で全員が同じものを見られる紙のほうが現場では強い、というのが多くの出展者の実感です。呼び込みの具体的な声のかけ方は素通りされないブースへ。展示会の声かけ・呼び込みのコツでも詳しく解説しています。
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1小間のブース、いくらでつくれる?
いずれも1小間(3m×3m)・税別。照明込みで、ターポリンやパネルなどの装飾は別料金です。
「あってよかった」持ち物チェックリスト
会場は文房具ひとつ買うのにも遠い場所にあることが多く、忘れ物は素直に痛手になります。目安の数量とあわせて確認してください。
| 分類 | 持ち物 | 数量の目安・メモ |
|---|---|---|
| 接客 | 名刺 | 普段の3倍。3日間の展示会なら1人300枚が目安 |
| 接客 | パンフレット | 想定来場者数の3〜4割の部数。段ボール1箱は予備として搬入 |
| 接客 | アンケート用紙・バインダー | 50〜100枚。立ったまま書ける硬い下敷きがあると回収率が上がる |
| 記録 | 名刺整理用の箱・輪ゴム・付せん | 「見込み度A/B/C」に分けて当日その場で仕分ける |
| 補修 | 養生テープ・両面テープ・ハサミ | 掲示物のはがれ、コードの固定に。会期中1回は必ず使う |
| 補修 | 延長コード・電源タップ | 3m以上を2本。モニターや充電で必ず足りなくなる |
| 体調 | のど飴・常備薬・絆創膏 | 呼び込み担当は2日目に喉をやられがち |
| 体調 | ウェットティッシュ・除菌シート | 展示物の指紋ふきにも使える |
| 運搬 | 小さめの台車・軍手 | 資料の追加搬入や撤収がぐっと楽になる |
| その他 | モバイルバッテリー・充電ケーブル | 人数分。決済や名刺アプリを使う場合は必須 |
なお、会場によってはブース内での飲食や、ペットボトル以外の持ち込みにルールがある場合があります。出展者向けマニュアルの「会場内の禁止事項」のページは、搬入前に一度目を通しておくと安心です。当日の服装や靴の選び方については展示会のスタッフ、何を着る?服装・ユニフォームの考え方もあわせてご覧ください。
開場前30分のルーティンを決めておく
開場時刻の30分前にブースに全員が立っている状態を作り、次の順番でチェックします。所要はだいたい15分、慣れれば10分で終わります。
まず電源と機材。モニター、照明、デモ機の電源を入れて映像が正しく出るか確認します。前日にコードを抜いて帰った場合、差し戻し忘れがいちばん多いミスです。次に展示物とパンフレットの配置。前日の来場者が触って動いた位置を戻し、パンフレットは取りやすい高さ(床から90cm前後)に補充します。
続いて清掃と身だしなみ。床のテープの切れ端やゴミを拾い、名札の位置と髪型をお互いに確認します。最後に30秒の朝礼。「今日の来場者数の予想」「今日の担当と交代時間」「昨日いちばん反応が良かった説明の切り口」の3点だけを共有します。長く話す必要はなく、全員が自分の今日の役割を言える状態になれば十分です。
想定外に備える「決めておくこと」3つ
当日は必ず何かが起きます。起きること自体は避けられないので、事前に判断のルールを決めておくほうが現実的です。
ひとつめは連絡手段。スタッフ全員が入ったチャットグループを作り、会場では通話より文字で連絡します。展示会場は音が大きく、電話はまず聞こえません。ふたつめは判断できる人を1人決めておくこと。値引きの相談、急な取材依頼、機材トラブルへの追加出費など、その場で判断が必要な場面が出てきます。「この場の責任者は誰か」を初日の朝に明言しておくだけで、動きが止まらなくなります。
みっつめは撤収の段取り。最終日の閉場後は会場全体が混み合い、台車もエレベーターも待ち行列になります。誰が何を持ち帰り、何を廃棄するかを紙に書いておくと、無駄な待ち時間が減ります。当日のトラブル対応は機材故障、搬入遅れ…展示会当日のトラブル対処法で、搬入搬出の流れは初出展の落とし穴。搬入・搬出をスムーズに乗り切る段取り術で詳しく紹介しています。実際のブースの構成イメージは施工事例もご参考ください。
よくある質問
1小間のブースに、何人スタッフを出せばいいですか?
幅約3m×奥行約3mの1小間なら、常時2名、余裕があれば3名が目安です。1小間に4名以上が立つと、ブースの中が人でふさがって来場者が入りにくくなります。人を増やすより、休憩を回せる交代要員を1名確保するほうが効果的です。1小間での見せ方の工夫は小さくても勝てる。1小間ブースで目立つための工夫にまとめています。
現場に慣れていないスタッフには、どこを任せるのが安全ですか?
最初はフリー役から入ってもらうのがおすすめです。資料の補充や名刺の仕分けをしながら、先輩スタッフの説明を横で何度も聞くことになるため、半日で説明の型が入ります。そのうえで午後から呼び込みに回すと、無理なく戦力になります。
名刺やアンケートは、当日どこまで整理しておくべきですか?
その日のうちに「見込み度」で3つに分けるところまでは終わらせたいところです。会期が終わってからまとめて仕分けようとすると、誰とどんな話をしたのかが思い出せなくなります。名刺の裏に会話のキーワードを一言だけ書く習慣をつけると、後日のフォローの精度が上がります。
まとめ
当日の運営で必要なのは、特別なスキルではなく決めごとです。役割を3つに分けて人数に応じてシフトを組む。持ち物を数量まで書いたリストで確認する。開場前30分のルーティンを固定する。連絡手段と判断者と撤収の段取りを先に決めておく。この4点だけで、当日の落ち着き方は大きく変わります。
そして何より、スタッフ全員が「自分の今の役割」を即答できる状態を目指してください。それができているブースは、来場者から見ても入りやすく、話しかけやすい場所になっています。
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