展示会の準備が進んでくると、「せっかく出るなら、展示会限定の特典を何か付けたほうがいいのでは」という話が社内で出てきます。
ただ、特典は付ければ成果が上がるものではなく、内容を間違えると利益を削っただけで終わります。この記事では、特典の考え方、値引き以外の選択肢、期限や件数の決め方、ブースでの伝え方を具体的にお伝えします。
特典の役割は「次の一歩」を決めてもらうこと
企業向けの商材は、展示会のブースでその場で契約が決まることはほとんどありません。来場者は情報を集めに来ており、社内に持ち帰って検討するのが普通です。
特典が力を発揮するのは、「あとで検討します」を「では来週、30分だけオンラインで話しましょう」に変える場面です。ブースで話しているうちに、次の約束を取りつける理由として使う。これが基本の考え方です。
特典の4つの型と、向いている商材
型は大きく4つあります。自社の商材に合うものを1つ、多くても2つに絞りましょう。
| 型 | 内容の例 | 向いている商材 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 無料診断・相談 | 現状のヒアリングと改善案の提示を60分無料で | システム、コンサルティング、設備の更新 | 対応する人の時間が必要。件数の上限を決める |
| サンプル・試作 | 製品サンプルの送付、試作1点を無料で | 部品、素材、食品、消耗品 | 送料と原価を事前に計算する |
| お試し期間 | 通常14日の無料期間を30日に延長 | クラウドサービス、レンタル機器 | 期間終了後の連絡方法を決めておく |
| 値引き・付属品 | 初回のみ5%引き、設置費を無料に | 単価がはっきりした製品 | 既存客との公平さ、利益への影響を確認する |
初めての出展でおすすめしやすいのは、「無料診断・相談」と「サンプル・試作」です。サンプルを送れば到着の確認で連絡ができ、診断をすれば結果の報告で訪問できるからです。値引きは契約の段階まで進まないと使われないため、次の一歩をつくる力は意外に弱いのです。
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1小間のブース、いくらでつくれる?
いずれも1小間(3m×3m)・税別。照明込みで、ターポリンやパネルなどの装飾は別料金です。
値引きを特典にする前に確認する3つのこと
それでも値引きを選ぶ場合は、次の3点を先に社内で確認してください。
- 利益が残るか:粗利率30%の製品を10%引きにすると、1件あたりの利益は3分の1減る。何件増えれば元が取れるかを計算する
- 既存のお客様にどう説明するか:定価で買ったお客様が会場に来て掲示を見ることもある。「新規の初回のみ」など対象をはっきりさせる
- 代理店や販売店がいる場合:販売店の価格より安くならないか、事前に相談しておく
ブースに金額をどこまで出すかは、展示会ブースに価格は書くべきかで整理しています。値引きの代わりに「設置費を無料」「消耗品を3か月分お付けする」のように、モノやサービスを足す形にすると、定価そのものを下げずに済みます。
期限と件数を決める。「会期後2週間・先着10社」のように
特典には、期限と件数を必ず付けます。「いつでも・誰でも」では特典になりません。決め方の目安は次のとおりです。
- 申込みの期限:目安として会期終了から2週間〜1か月。短すぎると社内検討が間に合わず、長すぎると忘れられる
- 件数:対応できる人数から逆算する。60分の診断を担当者2人で月に各5件こなせるなら、上限は10社
- 対象:「会期中にブースで名刺を交換した方」と決めておけば、あとから確認しやすい
- 申込み方法:専用フォームのQRコードか、その場で日程を決めるかのどちらかに絞る
「先着10社」と区切ったら、実際に10社で締め切ることが大切です。
ブースでの伝え方。A4の案内1枚と、口頭の一言
壁面に大きく書くと足は止まりやすくなりますが、特典だけが目当ての人も増えます。初出展なら、A4サイズの案内を1枚つくり、話が進んだ相手に手渡す方法が扱いやすいでしょう。
案内に書くのは、特典の内容、対象、期限、件数、申込み方法の5点だけです。部数は、目標とする名刺の枚数の3割ほどを目安に用意します。名刺の目標が150枚なら50部です。
口頭では、説明の最後に一言添えます。「会期中にお話しした方に限って、現状の無料診断を10社までお受けしています。来週か再来週で、30分ほどお時間をいただけませんか」。その場で日程まで決められれば理想的です。座れる席があると話を進めやすいので、当社の施工事例も参考に、1小間の中に商談の場所を取れるか検討してみてください。
会期後のお礼メールにも「無料診断は◯月◯日まで受け付けています」と期限を入れると、返信のきっかけになります。会期後の動き方は展示会が終わってからの30日でやることにまとめています。
よくある質問
Q. 特典を用意しないと、他社より不利になりますか?
特典がないこと自体は不利になりません。ただ、「次に何をするか」の提案がないと、名刺を交換しただけで終わりやすくなります。「一度デモをお見せします」といった次の一歩は必ず用意してください。
Q. 既存のお客様から「同じ特典を使いたい」と言われたら?
対象を「新規の初回のみ」と決めてあるなら、その旨を丁寧に説明します。既存のお客様向けに別の案内(追加導入の相談、点検など)を用意し、スタッフ全員で答え方をそろえておきましょう。
Q. 抽選会や高額な景品で人を集めるのはどうですか?
人は集まりますが、景品が目当ての来場者が増え、商談につながる割合は下がりがちです。また、景品の提供には景品表示法による金額の上限があり、主催者が抽選や配布のルールを定めている場合もあります。実施する前に、出展者マニュアルと自社の法務担当に確認してください。
まとめ
展示会の特典は、その場で契約を取るための道具ではなく、来場者に次の一歩を決めてもらうためのきっかけです。無料診断、サンプル、お試し期間の延長といった型から、自社に合うものを1つ選ぶ。期限は会期後2週間〜1か月、件数は対応できる範囲に区切る。伝えるのはA4の案内1枚と、最後の一言で十分です。
特典を考えることは、「初めてのお客様に最初に何を体験してほしいのか」を決めることでもあります。準備の中で30分だけ時間を取って話し合ってみてください。
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