展示会のブースにモニターを設置することは決まった。けれど、そこに何を映すかは決まっていない。出展の準備でよくあるのが、この状態です。ブースのデザイン、パンフレット、ノベルティ、当日の人員——決めることが多すぎて、映像は後回しになります。そして会期が近づき、こうなります。「とりあえず、去年作った会社紹介動画を流しておこう」。
弊社は展示会ブースの施工を行っており、設営と撤去で会場に入ります。その際、周囲のブースを見る機会があります。そこで実際に目にするのが、次のような光景です。
- PowerPointのスライドがそのままループ再生されている
- 過去にテレビで取り上げられた際のニュース映像が、画質の粗いまま流れている
- 社員が自作した映像が流れていて、ブースの造作は良いのに映像だけ質が落ちている
- Webサイト用に作ったブランディング映像が、そのまま流れている
いずれも、映像が用意されていないわけではありません。用意はされているのに、展示会向けではない映像が流れているという状態です。この記事では、展示会の映像がなぜ他の映像と違う設計を必要とするのか、そして何を流すべきかを整理します。
展示会場は、映像にとって特殊な環境
まず前提として、展示会場は映像を見せる場所として、かなり過酷な条件下にあります。
音が聞こえない
会場には数百から数千のブースがあり、常に人の話し声とアナウンスが流れています。隣のブースがマイクを使っていることもあります。この環境で、モニターから流れる音声を聞き取ることはほぼ不可能です。実際、多くのブースでは音量を絞るか、消音にしています。つまり、ナレーションで説明する映像は、内容が伝わりません。会社紹介動画やブランディング映像は、たいていナレーションで構成されています。音声を前提とした映像を音なしで流すと、意味の分からない映像が流れているだけになります。
立ち止まってもらえる時間が短い
来場者は通路を歩きながら、左右のブースを見ています。視界に入ってから通り過ぎるまでは、数秒です。その数秒で「自分に関係がある」と判断されなければ、足は止まりません。会社紹介動画は、多くの場合、冒頭に企業理念やイメージ映像が入ります。本題に入るのは30秒後、ということも珍しくありません。その30秒を待ってくれる来場者は、ほとんどいません。
途中から見られる
ループ再生している以上、来場者は映像の途中から見ることになります。最初から見てもらえる前提の構成は、機能しません。どのタイミングで目に入っても、何の会社で何を扱っているかが分かる必要があります。
展示会の映像は「説明」ではなく「とっかかり」
ここが最も重要な点です。展示会の映像の役割は、製品やサービスを説明することではありません。足を止めてもらい、スタッフが話しかけるきっかけを作ることです。説明は、スタッフが直接行えばいい。その方が相手に合わせて話せますし、質問にも答えられます。映像がやるべきなのは、その手前です。
- 何の会社か、一目で分かる
- 何ができるのか、一つだけ伝わる
- 「ちょっと話を聞いてみようか」と思わせる
この役割を踏まえると、映像に詰め込むべき情報は絞られます。
訴求は一つに絞る
多くの企業は、展示会に複数の製品や強みを持ち込みます。そして映像にも、それを全部入れようとします。しかし、数秒しか見てもらえない映像に複数の情報を入れると、どれも印象に残りません。その展示会で最も反応が取りたいものを一つ決めて、それだけを訴求する。残りはパンフレットとスタッフの説明に任せる。この割り切りができている映像は、明らかに足が止まります。
文字で伝える
音が聞こえない以上、情報は文字で伝えるしかありません。ただし、PowerPointをそのまま流すのとは違います。展示会用の文字設計には、いくつか条件があります。
- 通路から読める文字サイズ(モニターから2〜3m離れて読めるか)
- 一画面に入れる文字数を絞る
- 表示時間を長めに取る(読み終わる前に切り替わらない)
PowerPointの資料は、手元やプロジェクターで見る前提で作られています。文字が小さく、情報量が多い。展示会のモニターで流すと、通行者には読めません。
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1小間のブース、いくらでつくれる?
いずれも1小間(3m×3m)・税別。照明込みで、ターポリンやパネルなどの装飾は別料金です。
実際にあった「もったいない」ケース
冒頭で挙げた例を、もう少し詳しく見てみます。
ニュース映像をそのまま流す
テレビで取り上げられた実績は、本来かなり強い信頼材料です。しかし、放送素材をそのまま流すと、いくつか問題が起きます。まず画質です。古い放送素材は解像度が低く、大型モニターに映すと粗さが目立ちます。ブースの造作が綺麗なほど、その粗さが際立ちます。そして、文脈がありません。「◯◯テレビで紹介されました」という一言が画面上にないと、来場者にはただの映像にしか見えません。素材そのものより、その素材をどう見せるかの設計が抜けているのです。
社内で自作した映像を流す
コストを抑えるために、社員が自作するケースもあります。判断としては理解できます。ただ、ブースに数十万円から数百万円をかけていて、そこに流れる映像だけが手作りだと、全体の印象が下がります。来場者は、ブースと映像を切り離して見ません。空間全体で企業の印象を受け取ります。ブースの品質と映像の品質が揃っていないと、せっかく作った空間の効果が削られてしまいます。
何を流すべきか
以上を踏まえると、展示会用の映像は次の条件を満たすものになります。
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 音がなくても伝わる | 会場では音声が聞き取れない |
| 冒頭で何の会社か分かる | 途中から見られる前提 |
| 訴求は一つに絞る | 数秒で複数は伝わらない |
| 文字が通路から読める | 立ち止まらずに読まれる |
| 1〜2分のループ | 長いと一巡しない |
これらは、会社紹介動画やブランディング映像とは別の設計です。既存の映像を流用するのではなく、展示会用に作る必要があります。
予算別の考え方
映像制作は高額というイメージがありますが、既存の素材を活用すれば、費用を抑えることもできます。弊社(株式会社東京フィルムアート)では、グループ会社である合同会社WORTHが映像制作を本業としており、展示会用の映像を以下の構成でご提供しています。
5万円〜:スライド映像
すでにお持ちのパンフレットや製品画像を使い、ループ再生用の映像を構成します。撮影は行いません。「モニターは設置したが、流すものがない」という状況を、最小の費用で解消する選択肢です。
- 既存素材を使用
- 1〜2分/ループ再生
- 納期 約1週間
30万円〜:製品・会社紹介映像
撮影から編集まで行います。展示会場での視聴を前提に、字幕とカット構成を設計します。
- 撮影・編集込み
- 2〜3分/字幕あり
- 展示会後もWebサイトや営業資料に使用可能
100万円〜:マルチスクリーン演出
複数のモニターを同期させた演出や、大画面での展開に対応します。再生機材の選定・設置まで行います。
- 複数面の同期再生
- 再生機材の手配・設置
- 当日の動作確認まで対応
モニターの手配と再生設定について
映像を用意しても、当日の再生でつまずくことがあります。よくあるご相談が、複数の映像を順番に再生したいというものです。実際、「3本の映像をループさせたい」というご依頼をいただいたこともあります。これは再生機器の選定で対応できますが、機器によっては複数ファイルの連続再生や、複数画面の同期に対応していません。
弊社ではブースの施工とあわせて、モニターの手配、再生機材の選定、当日の動作確認まで対応しています。映像制作会社とブース施工会社が別だと、「映像は納品されたが、会場で正しく再生できない」ということが起こり得ます。同じ会社で完結させることで、この分断を防げます。
まとめ
展示会のモニターに流す映像は、会社紹介動画やブランディング映像とは求められる設計が違います。
- 音が聞こえない環境で伝わること
- 数秒で足を止めさせること
- 訴求を一つに絞ること
「とりあえず既存の映像を流す」という判断は、ブースにかけた費用の効果を下げてしまう可能性があります。弊社では、展示会ブースの施工と映像制作の両方を行っています。ブースと映像をあわせてご相談いただけます。すでにブースが決まっている場合や、他社で施工予定の場合でも、映像だけのご依頼を承っています。
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